BIBO-ROKU び・ぼう・ろく

情報過多の時代、ネット検索していて、それをネットワーク化していくことで、それらははじめて生かされるってことで、備忘録的ブログです。

オホーツク文化からゴールデンカムイまで

 羅臼のことを調べていたら、「オホーツク文化」に行き当たりました。

ご存知の方はどのくらいいっらしゃるのでしょうか。

このオホーツク文化は、アイヌの文化に大きな影響を与えたとも考えてられています。

 

5世紀になると、それまで北海道に住んでいた人びとの文化とは大きく異なる文化をもった人びとが、サハリン(樺太)から北海道のオホーツク海沿岸にやってきました

(北海道歴史・文化ポータルサイト あかれんが より引用)

 

www.akarenga-h.jp

 

この時期、北海道は本州の影響を受けた「擦文(さつもん)文化」のなかにありましたが、そこにサハリンなど北から海の民の文化「オホーツク文化」をもつ人々が南下してきたというのです。

彼らは、北海道北部から東部の沿岸部に住み始めました。

中でも特徴的なのは、動物の骨、とりわけヒグマの頭骨を積み重ねる「骨塚」が住居の奥に祭壇として設置されていたことだ。数十頭の頭骨が出土した例もあり、ヒグマを神聖なものとして扱い儀式を行っていたと解釈されている

日経新聞電子版 NIKKEI STYLE より引用)

 

style.nikkei.com

 

羅臼にも、このオホーツク文化の遺跡があり、舟形の入れ物はクマの顔とシャチの尾をもつ意匠がほどこされています。

町の情報|羅臼町 世界自然遺産の町 知床

出土品は現在国の重要文化財に指定されています。

北海道松法川北岸遺跡出土品 文化遺産オンライン

 

羅臼町飛仁帯(とびにたい)で出土した土器が、「オホーツク文化」と「擦文文化」それぞれの特徴を併せ持っているところから、両者が融合してできた文化が生まれたと考えられ、これを「トビニタイ文化」と呼んでいます。

オホーツク文化を残した人たちはトビニタイ文化を残した人たちへと替わり、さらに擦文文化の人たちと接触し、言葉の壁を乗り越えて"同化"の道を辿ったのであろう。しかし、純粋なオホーツク人の生業はあくまで海を舞台とする海獣狩猟であり、擦文人は鮭鱒をメインとする漁労に主体をおいていたことを考えると、すべてのオホーツク人がトビニタイ文化を残した人となって擦文人の中に吸収されていったとは思えないのである。オホーツク人が謎の海洋民族と呼ばれる所以の一つでもある

(「オホーツク人のゆくえ」宇田川洋 『北の異界 古代オホーツクと氷民文化』より引用) 

 

OKHOTSK

さあ、いよいよ佳境です。

 

このオホーツク文化がもたらしたクマへの信仰儀礼が、アイヌ人たちの「イオマンテ」という儀式に結びついたのでは? とも推論されているのです。

 

イオマンテとはどんな儀式だったのでしょうか。

日本の少数民族であるアイヌが今も伝承している、重要な儀式です。 イオマンテは熊送り、とも言われ、 狩りでヒグマなどの獲物の命を奪った際、その霊を神々の世界に送り帰す儀式のことを指します

(THE MAGAZINE より引用)

 

www.thesalon.jp

 

熊送りのような動物儀礼は、ユーラシア大陸の北部や、北アメリカにも見られるのですが、イオマンテはなかでも独特の儀礼形式で行われるのだそうです。

広く北部ユーラシアから北アメリカに至る北方地域における北方諸族の問では、山猟でクマをしとめた場合にその場で解体し、頭骨をはじめとする骨をその場で天の世界に送り返す儀礼を行っている。これは「オプニレ型」と呼ばれる動物儀礼である。これに対して「オマンテ型」とされる儀礼は「仔グマ飼育型クマ送り」を指し、きわめて特殊なもので厳格な規律の中で行われる最高のスタイルの儀礼とされる(「オホーツク『クマ祀り』の世界」宇田川洋 『北の異界 古代オホーツクと氷民文化』より引用)

OKHOTSK

 

「オマンテ型」の儀礼がいつ頃から、誰がおこなったのか、そしてアイヌの文化としてどのように定着したのかは諸説あり、今のところはっきりしないようですが、オホーツク文化」の南下による影響は否定の余地はなさそうです。

そして上記、宇田川先生の紹介する岸上先生の推論は、とても興味深いものがありました。

飼い送られる動物の共通点は、和人社会との交易のなかで、それらは商品(交換)価値が高く、かつ飼育しうる動物であったことである。筆者は、送り儀礼の思想大系は北方諸地域に広く分布するかなり起源的には古いものである一方で、その一亜型である「飼い型」の送り儀礼は、アイヌらの北方交易が進展していく中で成立したものであると主張したい

 

番外編1

イオマンテ」の儀式を文化人類学のテーマとして取り上げ、学生たちと考えたことがwebにあがっていました。

授業後の小テスト「何が分かったのかについて簡潔に書きなさい」で学生たちがどのように答えているか、大変興味深く拝見しました。(「OBR大生によるイヨマンテ理解」ページの最後の方です。立教大学 奥野克己先生のHP)

【第23回】アニミズムとは何か?

 

番外編2

このお話、いったいアイヌ文化って何だろうと、あらためて考えるきっかけにもなりました。ということで、結構人気の漫画(アニメにもなっています)「ゴールデンカムイ」を今さらながら、読んでいます。

 

 


さらにライターのギャラクシーさんが、阿寒湖に行かれて取材されていて、これもとても面白いレポートになっています。

阿寒アイヌ協会副会長の床さんの言葉が心に残ります。

色んなテレビや新聞、雑誌なんかの取材を受けてきたんだけど、聞かれるのはアイヌの暗い過去や、重々しい民族的主張なんかが多いんです。・・・僕らはこれからも、アイヌ文化は楽しいよ、かっこいいんだよ、っていうのを伝えて、お客さんにアイヌのことを知ってほしいと思ってます。

(どこでも地元メディア JIMOKCORO より引用)

www.e-aidem.com

関連図書

 

クマ祭りの起源

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トビニタイ文化からのアイヌ文化史

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新北海道の古代2 続縄文・オホーツク文化

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アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ)

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北の異界―古代オホーツクと氷民文化 (東京大学コレクション)

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古代の海洋民 オホーツク人の世界―アイヌ文化をさかのぼる

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